2010春ワークキャンプ報告
2010春 根室ワークキャンプ 報告



■期間
 2010年2月25日〜3月3日 6泊7日

■受け入れ先
 (財)日本野鳥の会 野鳥保護区事業所

■参加大学
 東京農業大学4年、1年
 帝京科学大学3年
 日本獣医生命科学大学2年
 東京農工大学2年
 北海道大学3年、2年
 立教大学1年
(6大学8名)

■作業内容
 新・事業所の整備・メンテナンス(ボランティア受け入れ体制づくり)
 ミズナラ林の除間伐(シマフクロウのための森作り)
 保護区の森林境界調査(保護区の情報収集)
 薪作り(間伐材の利用)

■セミナーなど
 根室の自然と日本野鳥の会の活動について
 除間伐準備セミナー
 除間伐作業のふりかえり
 合意形成セミナー
 シマフクロウセミナーとその振り返り
 野外セミナーとその振り返り
 自然保護セミナー
 懇親会
 ワークキャンプのふりかえり

■スケジュール

・1日目
 午前:移動
 午後:買出し・集合
    オリエンテーション
   (根室の自然と日本野鳥の会の活動について・除間伐準備セミナーを含む)
  夜:合意形成セミナー

・2日目
 午前:新・事業所の整備・メンテナンス(計画)
 午後:新・事業所の整備・メンテナンス(実行)
  夜:シマフクロウセミナーとそのふりかえり

・3日目
 午前:野外セミナー(前半)
 午後:野外セミナー(後半)
  夜:野外セミナーふりかえり 自然保護セミナー

・4日目
 午前:ミズナラ林の除間伐作業
 午後:ミズナラ林の除間伐作業(つづき)
  夜:除間伐作業ふりかえり

・5日目
 午前:ミズナラ林の除間伐作業(つづき)
 午後:ミズナラ林の除間伐作業(つづき)
  夜:懇親会

・6日目
 午前:保護区の森林面積調査
 午後:保護区の森林面積調査(つづき)・薪作り
  夜:ワークキャンプのふりかえり

・7日目
 午前:大掃除・片付け
    解散

■作業報告

【新・事業所の整備・メンテナンス】
滞在場所の野鳥保護区事業所は半年前に移転したばかりです。
今回のワークキャンプがはじめての団体受入れでしたが、それまでボランティアが滞在できる体制が整っていませんでした。
団体生活に必要なもとを買出し、また、壁紙補修や電球の交換、もとレストランだったため事業所に相応しくない貝の装飾品や食器類の撤去などを行いました。最後に窓や床を掃除して終了しました。



【ミズナラ林の除間伐】
ワークキャンプで継続的に行なっている作業です。
作業場所の渡邉野鳥保護区ソウサンベツはかつて木材利用のために伐採された森です。現在は主にミズナラからなる自然二次林に再生しています。
林として再生しているものの、ひとつひとつの木はもとの切り株から枝分かれするように生えてきていて、株立ちになっています。
このままではシマフクロウが暮らせるような巨木は育ちにくいため、間引きをしていきました。
間伐材の一部は鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリのストーブの薪として利用するため運び出しました。その量はおよそ軽トラとハイエースで4往復分でした。



【保護区の森林境界調査】
渡邉野鳥保護区フレシマに隣接する土地の森林面積を調べる調査を行ないました。
GPSをグループごとに持ち、林縁部をたどっていくことで調べます。
その土地にある森林の面積を土地の価格に反映させ、保護区として買い取る際の参考にされます。



■その他の活動報告

【除間伐準備セミナー】
ほとんどの人にとってはじめての除間伐作業に向けて、
実際にノコギリや木材を使って、経験者の学生から手順や注意点を教わっていきました。

【合意形成セミナー】
合意形成とは全員が意見を持ち寄り、全員が納得できるひとつの答えを作ってゆくこと。合意形成のために必要な姿勢と答えに行き着くまでの難しさ、合意形成そのものの重要さを学んでいきました。

【シマフクロウセミナー】
シマフクロウの研究者の山本純郎氏をお招きして、その生態や根室における保護の現状と問題、調査の様子などをスライドを使ってお話していただきました。

【野外セミナー】
レンジャーのみなさんに根室市内にある野鳥保護区等を案内していただきました。
また、移動中の車内では各自予習してきた内容を発表したり、レンジャーに質問をしたりしました。
コース:持田野鳥保護区東梅→風連湖湖畔通過→別当賀川・東京三菱UFJ信託銀行野鳥保護区酪陽→藤田野鳥保護区酪陽(川口漁港)→渡邉野鳥保護区フレシマ→昆布盛ウィンドファーム(風車)→春国岱原生野鳥公園ネイチャーセンター→明治乳業野鳥保護区牧の内→歯舞風車→納沙布岬→ミズナラの風衝林


【自然保護セミナー】
普段それぞれの大学で活動している学生のそれぞれの自然に関する活動・自然保護の取り組みを紹介・共有し互いに視野を広げました。

【懇親会】
事業所とネイチャーセンターのレンジャーの方々4名と除間伐にご協力いただいた高野さんをお招きし、夕食の鍋を囲みながら楽しくお話いただきました。

【ワークキャンプのふりかえり】
7日間の滞在のなかで、それぞれが学んだこと・得たことをキーワードに書き出し発表をしていきました。また、今後のワークキャンプ運営の参考に意見・提案ももらいました。

■参加者の感想■

高階あゆみ(東京農工大学2年)初参加

まず一言で言えば,「行ってよかった!」です。学んだことは本当にたくさんあるのですが,集団生活を通しては「助け合うことの重要さ」や「色々な人がいる」ということです。
それぞれが得意・不得意な面を補い合って良いワークキャンプを創って行けたような気がします。また,自然保護のことに関してはやはり難しいと感じました。まだまだ曖昧で,確立されていない分野だけに,自然保護については様々な考えを持つ人がいるし,対策も試行錯誤の連続なのだなと感じました。
印象に残っているのは昆布盛の風車です。もちろん初めて近くで風車を見ましたが,予想以上の速さや先端の鋭さから感じた恐怖は忘れられません。この頃では大分バードストライクについての認知が増してきたように思いますが,それでもまだまだ風車という外見的なイメージだけでその存在を肯定している人は多いように思います。ここで感じたのは,風車に限らず,物事の良い面と悪い面の両方を客観的な視点から見ることで,多くの人に事実を知ってもらうことではないかと考えました。

村松弘規(北海道大学3年)参加三度目


前回参加した時に比べて野鳥保護区の数が大きく増えていたことにまず驚きました。
今回のワークキャンプは、保護区事業の一端と、レンジャーの役割、その仕事の大変さを教わったと思います。企業を通じた土地の買い取りの話や様々な軋轢の話が印象的でした。
作業自体は木を切って運ぶなど簡単なものが多く、積極的に参加できたかなと思います。
前回まではなかなかできなかった、「作業しながら時間を見つけ考える」ことも少しはできました。「100年先を見越して間伐をしているが、本当に効果はあるのか?」とか、「レンジャーって本当にこんなに大変なのかな?」とか「現場の重要さ・たいへんさ・面白さを伝えるには色々な現場を経験しなければならないのだな」とか考えていました。
新しい事業所は使用できる部屋が少なく、参加者の距離が近くて、居心地が良かったです。
自分たちで整備することができたことで愛着が湧きました。これからも色んな方々に使われて欲しいと心から思います。
前回は理解しきれなかった、根室の地形や自然史、保護区や春国岱の位置関係なども今回ようやく理解することができました。あらためて、貴重な自然(海岸植生や砂丘、風衝林やシマフクロウの森)が残されている地域だと感じました。
今回ワークキャンプに参加して自分は、本当に効果のある自然保護活動をはかる物差し、北海道の自然の貴重さをはかる物差しを1本ずつ見つけられたと思います。これからはこの物差しで他の地域も見ていきながら、より多くの物差しを見つけたいと考えています。


■ワークキャンプを終えて■

チーフコーディネーター
大久保香苗(東京農業大学4年)


6度目のワークキャンプ、3度目の根室で、私にとっては最後のワークキャンプでした。
根室の自然や自然保護のことよりも、ワークキャンプそのものについて考えさせられることの多かったワークキャンプでした。ワークキャンプ前後の時間では、ボランティア受入れの準備の手間をこれまで以上に実感しました。新しい調理器具を使ったり、ボランティア受入れのために必要なものを全員で考えリストアップしたことでは、団体生活には必要な物もその量もたくさんあり、それだけ費用がかかることを知らされました。
ボランティア受入れが決して簡単なものでなく、初期の投資とそれに見合った継続性がなければ安易に受け入れられるものではないのだと考えさせられました。それだけに、活動1回ごとの成果と次につなげていく体制は常に考えていかなければならないものだと、これまで以上に感じることができました。
自分自身の今後とつながったことでは、ワークキャンプ中に何度か耳にした松本さんの「(別のことを目指していても)同じベクトルを探して自然保護をしていく」という言葉が印象的です。
農地開拓をしていくはずの明治乳業と保護区設置ではまったく向きが違うというのは、言われて気づかされました。大きく目指すことは違っていても、細かいベクトルを見ていけば協力できるところがある、全く別々に見えるものをつなげてしまう自然保護のやり方が今更ながら、驚きで面白い!と思いました。仕事としての自然保護が、こういった小さなところの調整の積み重ねで成り立っていると気づき、人や団体とのやりとりは煩わしさではなく、それ自体が仕事で、やりがいなのだと思いました。自然保護を仕事として始める4月を目の前に大切なことを気づかせていただきました。




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