2009春 根室ワークキャンプ
■開催地
北海道根室市

■開催期間
2009年2月18日(水)〜2月24日(火) 6泊7日

■受け入れ先
(財)日本野鳥の会 野鳥保護区事業所
春国岱原生野鳥公園ネイチャーセンター

■参加大学
東京農業大学、東邦大学、武蔵野大学、早稲田大学、麻布大学、帝京科学大学
【スケジュール】
●1日目/2月18日(水)
午前 羽田空港から出発
午後 買出し 
夜  オリエンテーション
●2日目/2月19日(木)
午前 川口にてワシ類観察
午後 渡邉野鳥保護区ソウサンベツの行軍(フクロウの巣箱をかける木を探す)
   広葉樹林の間伐
夜  ―
●3日目/2月20日(金)
午前 フクロウとモモンガの巣箱づくり
午後 巣箱の設置作業
夜  表現の幅を広げるセミナー
●4日目/2月21日(土)
午前 積雪のため研修所に待機
午後 ほだ木づくりと薪割り
   保護区についてのレクチャー
夜  懇親会
●5日目/2月22日(日)
午前 ワシ類の調査
   間伐材の運び出し
午後 薪割り
夜  シマフクロウセミナー
●6日目/2月23日(月)
午前 渡邉や野鳥保護区フレシマの行軍(巣箱のかけられる木探し)
午後 野外セミナー
   シマフクロウの保護区見学
夜  自然保護セミナー
●7日目/2月24日(火)
午前 大掃除
午後 全体ふりかえり
   解散
【作業報告】
・保護区行軍(巣箱のかけられる木探し)
 渡邉野鳥保護区ソウサンベツ、フレシマを3班に分かれて歩きエゾフクロウの巣箱のかけられる木を探し、GPSで位置を記録しました。
 対象となる木は胸高直径40センチ以上。
 保護区の林は二次林のため、若い木ばかりですが、対象となる木を複数本見つけることができました。
・広葉樹林の間伐
 シマフクロウの営巣できるような樹洞のできる巨木の森を育てるための作業です。
 ソウサンベツの林は40〜50年ほど前に一度伐採され、萌芽してできた二次林です。そのため細い木が株立ち、密集して巨木が育ちにくい状態です。株立ちするひとまとまりの木の約半数を伐採し、成長しやすくしました。
 50m×50mの区画内を3班11人で約3時間かけて伐採しました。
・フクロウとモモンガの巣箱作り
 合板を切り分け組み立てて、保護区に設置するフクロウとモモンガの巣箱をつくりました。
 フクロウはシマフクロウより小さいエゾフクロウ用でず。4人の班が作成しました。
 モモンガはフクロウのエサとなる動物です。エサとなる生き物の暮らせる環境づくりとして、4つ、2人の班×2で作成しました。
・巣箱の設置作業
 保護区行軍で見つけた木のひとつに作成したフクロウ用巣箱を設置しました。
 フクロウの巣箱の設置は受け入れ先の方が行い、学生は木登り体験でフクロウの視線を体感させていただきました。フクロウの巣箱を設置した木の周辺にモモンガの巣箱を設置しました。
・ほだ木づくりと薪割り
 ソウサンベツの間伐材のうち、適度の太さでまっすぐなものを選びドリルで穴を開け、菌糸を打ち込んでほだ木にしました。
 その他の間伐材は枝先の細い部分を除き、1mほどに切り分けたものを保護区から搬出し、さらに25cm程度に切った後、手斧で薪にしていきました。
 割った薪と材の一部(鶴居ワークキャンプで割る)は鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリのストーブに使用します。
【その他の活動】
●ワシタカ観察
 2日目朝の作業前に、受け入れ先の方に実施していただきました。
 風連湖にそそぐ別当賀川の河口、川口の凍った水面を歩き、双眼鏡やスコープを使って、オオワシ、オジロワシ、トビを観察しました。
 オオワシとオジロワシの違いについても教えていただきました。
 途中、氷下網漁の様子を見たり、エゾシカの毛皮(頭蓋つき)を発見したりしました。
●表現の幅を広げるセミナー
 受け入れ先の方々、学生、根室の生き物たち、の役を演じる3班に分かれ 手作りのお面をかぶり、それぞれが根室に対してどんな思いをもっているか考えました。同じ根室であっても立場の違いで思いは違っている、という視点の違いに気づくためのセミナーでした。
●保護区についてのレクチャー
 受け入れ先の方よりスライドを使ってご説明いただきました。
 タンチョウやその減少と保護の歴史、野鳥の会の保護区や企業と連携した保護活動の仕組みなどを学びました。
●シマフクロウセミナー
 シマフクロウの専門家をお招きし、スライドを使ってレクチャーしていただきました。ロシアのシマフクロウの暮らす森の様子や生態、保護の問題について知りました。
●自然保護セミナー
 自然保護が、調査研究、環境管理、教育普及の分野から支えられているという考え方を伝え、それぞれが今後自然保護に関わる上での参考になるようにしました。
●懇親会
 4日目夜に研修所にて開催していただきました。
 ワークキャンプ通して、いつも遅くまで残ってくださっている、受け入れ先のみなさんに加え、鶴居伊藤タンチョウサンクチュアリのレンジャーにもお越しいただきました。
●野外セミナー
研修所から納沙布岬まで、根室半島を一周しました。
・歯舞湿原の風車
 風車を真下から見上げ、車のエンジンを停め風車の羽根が風を切る音を聞きました。バードストライクの問題について教えていただきました。
・納沙布岬
 岬からシノリガモやクロガモのカモ類、カモメ類、アザラシを観察しました。
 また、国後島を臨み北方領土の問題にも触れました。
・明治乳業野鳥保護区牧の内
 保護区の高台から、海、沼、湿原、林とづづく保護区の環境を見渡しました。
 明治乳業の社員ボランティアの植樹した場所の見学も行いました。
【参加者の感想】

麻布大学1年 相澤沙織

テレビや新聞などでも毎日のように取沙汰されている「環境・自然保護」の実際を体験してみたいと思い、この根室ワークキャンプへ参加しました。

「シマフクロウの棲める森づくり」などの作業を経て、一度壊してしまった自然を元に戻すことについて 課題の多さに気づかされました。

植樹を例に挙げると、自分自身「木を植えれば自然保護になる」程度にしか考えていませんでしたが、実際 ただ植えれば良い訳ではなく 目的にあった種類や場所・気候などを調査し、根付くまで動物に食べられないように保護し、ある程度 成長した後に間引きを行い…… 気が遠くなるような工程を行わなければいけません。

また 今回は実際に将来的にシマフクロウが住めるような大木が育つよう50×50m四方での間伐作業を行いました。しかし50×50mなんて まさに“氷山の一角”に過ぎず、野生のシマフクロウが生息できるようになる為にはもっと広い範囲の間伐を行う必要があります。このことからも分かる通り、一度壊してしまった自然を元に戻すには莫大な時間とコストが必要となります。

この事実を一人一人が「知る」ことにより、日常生活の中より 例えば紙のリサイクなどがさらに意識的に行われるようになり、結果的に新たに伐採される木の量が減少すると考えます。

今回このワークキャンプで得た貴重な体験をきっかけに私は環境に対して興味を持つようになりました。

そして、まずは周りの人から 環境に対して興味を持って欲しい。と思えました。


東京農業大学2年 中山雄成

7日間は思った以上にハードで厳しい寒さとあいにくの天気の日もあったりしたけど、学ぶものがとても多かったワークキャンプでした。今回参加したのは大学でFAの事を知って前々から興味を持ち、北海道の自然に触れてみたいと思ったのと、活動を通じて普段では学べないことを1つでも多く吸収したいとの思いがあったからです。

一面真っ白で輝く景色には本当に感動しました。作業以外で受け入れ先の方達と夕食の後などで色々話しをして、自然保護の話からここでしか聞けないような事、人との交流の大切さなどとてもためになる事を聞け、また毎日の振り返りやセミナーで自分の意見を伝える場面は普段そういうのがあまりないし苦手だったけど表現することの大切や難しさを知り、自然に触れること以上にすごく勉強になったかもしれません。

ここでの体験はまだまだ書ききれないけど根室に来て本当に良かったし、また参加したいなと思える7日間でした。一緒に参加した7人の仲間と受け入れ先の方達本当にありがとうございました!
【全体を振り返って】

東京農業大学3年 大久保香苗 (チーフコーディネーター)

2008夏ワークキャンプから2度目の根室でした。
今回は、参加する学生誰もが始めての春(冬)根室で、途中に地吹雪をはさみ、除雪作業あり、研修所に閉じ込められ・・・北海道体験100%のワークキャンプとなりました。おかげでスケジュールはかなりハードになりましたが、大きな怪我はない一週間を過ごすことができました。
作業は「シマフクロウの棲める森づくり」を全体のテーマとしていてその途方もないスパンでの保護計画に改めて圧倒されました。
今でこそ絶滅危惧種と呼ばれるシマフクロウですが、コタンコロカムイ(集落の神)と呼ばれるだけ身近な存在だったことにセミナーや受けれ先の方のお話を通して気づかされました。
珍しいから守るのではなく、あたりまえにいた存在だからこそ保護していかなければならいんだ、と思いました。
受け入れ先のみなさまには、作業以外でも1日目のFM根室出演に始まり、多数のセミナー・レクチャー、懇親会を予定に組み込んでいただき、本当に充実したワークキャンプにしていただいただきました。
今回の体験を、次回のワークキャンプにも活かしていきたいと思います。

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