2008春 鶴居WC報告
<開催地>
北海道阿寒郡鶴居村字中雪裡南
 (財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ

<開催期間>
2008年2月15日(金)〜2月21日(木)6泊7日
【スケジュール】
2月15日
羽田空港集合
釧路空港到着、昼食、買出し
オリエンテーション
タンチョウセミナー

2月16日
採餌量調査、調査片付け、調査記録確認
きくセミナー

2月17日
採餌量調査、調査片付け、調査記録確認
※次の日早朝にねぐら観察のため、セミナーなし

2月18日
タンチョウのねぐら観察
採餌量調査、調査片付け、調査記録確認
ミニセミナー

2月19日
野外セミナー
野外セミナー振り返り

2月20日
採餌量調査の中間まとめ・発表準備
懇親会、調査結果まとめ報告

2月21日
宿泊場所の掃除
ワークキャンプ振り返り
釧路駅で解散
食事は自炊。皆で協力して作ります。
【作業報告】
◆給餌場における採餌量調査
受け入れ先である鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリが行っている調査に協力しました。
内容は、越冬時におけるタンチョウの自然採食促進、および人工給餌への依存緩和手法を確立するため、タンチョウの現状の採餌量の基礎データ収集を目的とした調査です。
サンクチュアリの給餌場において、対象個体を1日観察し、その個体が給餌場に飛来してから飛去する間に何粒のデントコーンを食べるのか調べました。
屋外の調査ということで、寒く、途中で調査の辛さを味わいました。しかし、1日中タンチョウの餌を食べる姿、休む姿、遊ぶ姿などを見続けたことで、個体により性格が違うことなどタンチョウの魅力をたくさん知ることができる良い機会となりました。
タンチョウが何粒コーンを食べているかカウント。
見逃すな〜
◆採餌量調査のまとめおよび発表
今回の採餌量調査の結果をまとめ、懇親会で発表する機会がありました。
採餌量調査は、今年から始められた調査のため、まだまだこれからデータの蓄積をしていく段階です。今回の調査結果だけで何か言えるわけではないため、私達が行った発表は、「どの時間によく採餌するのか」「オスとメスで採餌量に違いがあるのか」など、3日間の採餌量調査で自分たちが疑問に思ったことについて集計し、発表しました。
地域の人々の前で、今回の調査結果を発表しました。
◆タンチョウのねぐら観察
タンチョウのねぐら利用状況を調べるために毎年ねぐら調査を行っています。今年は本格的な調査ではありませんでしたが、タンチョウがねぐらにしている雪裡川を見て、タンチョウのねぐらを観察しました。
【その他】
<セミナー>
1日目
◆タンチョウセミナー
タンチョウ保護の現状(数が増えている)を知り、今後この状態が続くとどんな問題が起きるのか考え、それに対してどのような取り組みが必要になっていくのか考えました。

2日目
◆きくセミナー
ワークキャンプでは参加者同士はもちろん、レンジャーや地元の方々から話を聴く機会が多くあります。そのために、参加者が人の話を聴き、相手の話を理解することの重要性を知り、「話を聴く」にはどのようなことに心がけたらいいのかを知るセミナーを行いました。

4日目
◆ミニセミナー
自分が今興味を持っていること(環境や自然をテーマに)を8分間でプレゼンし、その後5分間質疑応答を行いました。発表者は人前でプレゼンをする練習になり、聞く側も他分野の話を聞くことで、互いに勉強をし合うことができました。
ワークキャンプには自然保護に興味がある学生が集まっていますが、メンバーの好きな自然は鳥、昆虫、河川環境、巨樹など様々でした。
夜はセミナーで自分の意見を発表したり、人の意見を聞いたりしました。
5日目
◆野外セミナー
午前中はタンチョウの住む場所として、雪裡川、鶴見台、音羽橋を見て回り、午後にはタンチョウによる農業被害を受けている農家さんの家に伺い、タンチョウと人との共存について話を聞きました。また、最後には細岡展望台から釧路湿原を一望しました。

◆野外セミナー振り返り
野外セミナーを通しての感想を発表しました。その後、鶴居村のタンチョウ保護に関わる「人」をあげてもらい、その人々がどのようにタンチョウと共存を図っているのかを認識しました。最後に各自およびみんなができる、またはやっていきたい「タンチョウ保護」について発表しました。
野外セミナーではタンチョウのねぐらなどを案内してもらいました。
農家の敷地内で牛の餌を食べてしまうタンチョウ。
野外セミナーでは農業被害の現場を見て、農家の方のお話を聞く機会がありました。
<懇親会>
6日目の夜に、合宿研修所にて懇親会を開催しました。
この懇親会にはレンジャーを含め、地元の方々にお越しいただき、食事やお酒を楽しみながら交流をしました。
参加者の方の中には、自ら特性北海道シチューを作って下さるなど、差し入れの量も種類も豊富で、皆さん楽しんでいる様子でした。
懇親会の中で、FAの説明と今回の採餌量調査の目的や結果を発表しました。初参加者も多くの地元の方々と交流することができたようです。
【参加者の感想】
大久保香苗(東京農業大学 農学部農学科2年)

自分がこれから自然や環境保護とどう関わっていくのか?これを考えるのが今回私のWCの目的でした。
特別天然記念物という肩書きを持ちはるか北海道の東に生きるタンチョウは私にはずっと遠い存在でした。
しかし鶴居村では農場を歩いていたり、遠く飛び去るのが見えたり、日常の生活に溶け込むような身近な存在です。どんな希少な生き物でも、それを身近に感じて生活する人がいることが不思議でした。身近な自然を大切にしたいと漠然と思ってきたけれど、すべての生き物が「身近な生き物」として人とつながっていると気づきました。その生き物を身近に感じる人がいると知ることで、そういった人と出会うことで、距離的にどんなに遠い自然でも身近になりうるんだなと思いました。
なぜか自然との隔たりを感じてしまう今日の暮らしだけれども、自然との結びつきを意識して生活できればと思うし、そう意識できる感動を伝えられたらとも思います。
これがWCで得た私の自然とその保護への考え方です。

山川航平(東邦大学 生物学科2年)

今回の調査は、足輪のついた対象となるタンチョウが、1日に何粒のデントコーンを食べるかをカウントするという、とても地味なものでした。野外での調査であったため、ひたすら寒く、長時間スコープを覗くため、目が疲れました。しかし、この調査は、タンチョウの人による給餌への依存を緩和し、自然採食を促す計画の第一歩であり、重要な基礎データの収集であったため、責任を感じながら取り組むことができました。
調査の中で気が付いたことは、同じタンチョウでも色々な性格をもった個体がいるということです。観察しているとその個体の性格が見えておもしろく、その個体に愛着が湧いてきました。
野外セミナーでは、鶴居村の農家を回って、実際に農家さんからお話を聞かせていただき、人とタンチョウの共生について、より現実的に考えることができました。タンチョウ保護には地域の人々の理解が不可欠であることを実感しました。
このワークキャンプは、実際に現場に出て、見て体験したことに意味があって、本の中だけでは学べないものが数多くありました。また、レンジャーや地域の方々との出会いがあり、そして何よりも自然保護に関心のあるFAの仲間との出会いがありました。本当に多くのことを学んだワークキャンプでした。
【参加者の感想】
【最後に】

鶴居ワークキャンプでは、沢山の美しいタンチョウやそのタンチョウを保護する人々に出会うことができます。そして、タンチョウ保護の現状や問題を知る機会もあります。自分が体験し、話を聞かなくては感じられないことがこのワークキャンプでは得られると思います。
北海道の大自然を肌で感じたい人、自然保護に興味がある人、タンチョウが見たい人、是非参加してみてください!

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