2008春 キナシベツWC報告
【開催地】(社)日本ナショナルトラスト協会 キナシベツ自然保護地区(北海道釧路市)
【開催期間】2008年2月14日(木)〜2月23日(土)9泊10日
【スケジュール】
2月14日
 羽田空港集合
 釧路空港到着、昼食、買出し
 オリエンテーション
 ルール・マナーセミナー

2月15日
 看板作業の説明(am)・作業(pm)
 看板下地作り

2月16日
 アオサギコロニー調査
 アオサギレクチャー
 オオワシ・オジロワシセミナー

2月17日
 オオワシ・オジロワシ一斉調査
 看板作成

2月18日
 看板作業
 キナシベツ自然保護史セミナー

2月19日
 野外セミナー
 野外セミナー振り返り

2月20日
 看板作業
 懇親会・発表

2月21日
 自然誌調査
 自然保護セミナー

2月22日
 ワカサギ釣り・看板作業
 打ち上げ

2月23日
 大掃除
 全体振り返り
 閉会式
【作業報告】
○アオサギコロニー調査
キナシベツの自然環境の動向を図る指標として行われている継続調査で、今年で10年目になりました。
これまでのデータを集計する準備です。
今年はエリアが2つに増え、ナンバーテープの数も140近くまで行きました。(昨年までの巣も含め)
調査担当の方のアオサギセミナーはかなり面白く、アオサギの名前の由来や動向などをわかりやすく説明していただきました。
砕けた雰囲気だったので、鳥の目の4原色のお話など様々な話題に触れ、自然の世界の見方が広がりました。
○オオワシ・オジロワシ生息数調査
毎年行われる一斉調査の参考資料として、乙部海岸から海沿いの各ポイントを周りました。
前日にワシタカセミナーを行ったところで、トビ・ノスリ・オジロワシを発見した時に、形や色・飛び方で見分けることが出来ました。
オオワシは発見できませんでしたが、オジロワシは成鳥と幼鳥を発見することが出来ました。
途中、ハヤブサのつがいを目にしました。
○自然誌調査
キナシベツ自然保護地区内の状態を把握するため、毎年少しずつ分割して調査し、人工物がどの程度あるかなどを調べました。
今年は、乙部海岸から原生林に入り、凍った川を下って線路沿いに出ました。
ミズナラ・カツラ・ハルニレ・サクラ・トドマツ・アオダモなど、多種の木々が立ち並び、巨木も数多くありました。
凍った川には、丸太の木が橋として横たわっているような場所がいくつか存在していました。
途中、オオワシの成鳥を頭上にん見ることも出来ました。双眼鏡がなくてもくさび形がはっきりとわかるくらいでした。
○看板作成
キナシベツにある海岸植物を守るため、車での乗り入れ自粛を促す看板を作成しました。
場所は、乙部海岸・尺別海岸・キナシベツ海岸の3箇所です。120×90センチという、とても大きな看板でした。
今回は呼びかけるための看板という事もあり、・嫌味にとられないもの・少しでも乗り入れの数を減らしたいことを伝えること・謙虚な言い回しに気をつけながらデザインしました。
看板は明るい印象のものばかりで、見ていて楽しい看板に仕上がりました。
植物を守りたいということをキーワードにデザインしました。完成度はかなり高いと思うのでキナシベツへ行ったらぜひ見てくださいね。
【全体として】
初日3人、最終日11人と参加者が日を増すごとに増える形だったので、だんだん賑やかになり、気持ちが明るくなると共に、作業速度も倍になって期間内に予定の作業を完了させることができました。
看板のサイズが大きいものだったので、最初は終わるのか心配でしたが、実際に設置場所の海岸を見に行ったり、榊原さんのキナシベツに対する思いを受けとることで、自分たちが伝えたいメッセージが絵や字として形になっていきました。
また、共に作業する仲間が増えたことで、今まで気づかなかった視点や、共感してもらうことによる自信を貰うことができたように思えます。
何より、皆で協力したことでそれぞれ納得のいく出来栄えの看板が仕上がりました。
【チーフの感想】
石橋弘美(川村学園女子大学人間文化学部観光文化学科4年)

今回、私はキナシベツワークキャンプ参加経験なしでのチーフでしたが、まわりの人たちに助けられて、ものすごく心に残る素晴らしい時間を過ごすことができました。
1度お会いしただけなのに、(私をニックネームの)「ばっしー」と温かく接してくれた榊原さん、いつも楽しい雰囲気を作ってくれた森田さん、コーディネーターとして一緒に活動し学ぶことが多かった岡田君、片岡君、いつも率先して動き、前向きな姿勢で取り組んでいたメンバーの皆に心から感謝します。
そして、榊原さんのお母さんにはいつも笑顔にさせてもらって元気をたくさんもらいました。
学生最後のワークキャンプ、キナシベツに行ってよかったと思います。もっと早く行っておけばよかったと悔しさもありますが、これが終わりなのではなく、学生を卒業した後も貴重な経験として心に残り、自然や多くの人たちとの関わりを深めていくきっかけであり、第一歩なのだとも思います。
キナシベツで体験したこと、感じたこと、考えたこと、これから長くつながっていくと思います。ありがとうございました。
【参加者の感想】
「キナシベツの自然にふれて」
日本大学生産工学部土木工学科衛生工学研究室3年
岡田 英昭

―――はじめて見たカツラの樹は、大きかった。
大学の都合のため、2日遅れで参加することになった私は、初めてコーディネーターを務めることと、キナシベツに行くことへの期待と不安を抱きつつ、飛行機に搭乗した。空港からバスへと乗り継ぎ、電車に揺られること一時間。トンネルを抜けるとそこは雪国・・・ではなく、今年の北海道は暖冬で雪はだいぶ溶けていた。
「いらっしゃい。」
よく通る声の榊原さんが、駅まで迎えに来て下さっていた。
キナシベツの魅力を伝える上で、受け入れ先の榊原さんを抜きには語れまい。とてもあたたかい方だ。人との接し方、私たちへの話し方、そしてその話の内容までもがあたたかい。よくご自身の考えを語って下さるのだが、決して人を批判したりはしない。いろいろな世の中の流れや考え方を広い目でとらえ、「こうしたらいいのにね。」と語るその話の一つ一つに私はこのワークキャンプ中、何度も聞き入ってしまった。
さて、作業を通して、私はキナシベツの自然のいろいろな表情を見ることができた。それは穏やかな日差しや、耳がちぎれるかと思うくらいの海風などの気象条件のみならず、植生や地形の複雑さからもキナシベツの自然の魅力を感じることができた。
まず驚いたのがヤチボウズの大きさである。昨年鶴居ワークキャンプで見た、釧路湿原のそれよりも遥かにデカい。参加者の阿部君は「湿原おばけ」と呼んでいたが、それは海原の海坊主のように、湿原にニョキニョキ生えていたのである。そして同じものが榊原さんの農場と農道の間に生えていたことにも驚いた。ここは、人と自然の距離が近い。
また、オオワシやオジロワシを目にすることもできた。私は今回、「ワシ・タカセミナー」を担当し、事前に彼らの置かれている状況について調べていた。鉛中毒、油田の開発などに苦しむ彼らであるが、実際に見るとそんなことを忘れてしまうほど、優雅に空を舞っていた。彼らがずっと北海道の空に在って欲しいと思った。
そして原生林にも足を踏み入れた。北海道の原生林は針葉樹と落葉広葉樹で形成されている。正直、原生林=照葉樹林というイメージのある本州の私は、光が常に差しこむ落葉樹の森にはそれほど期待していなかった。しかし、はじめて見たカツラの樹は、大きかった。春を待つキナシの森でひっそりと、でも雄大にたたずんでいた。その生命感に圧倒され、本当にキナシベツに来て良かったと思った。
榊原さん、森田さんをはじめ、懇親会に来てくださった地元の方々、参加者のみんな、そしてキナシベツの自然など、ワークキャンプ中の出会いは一生の宝だと思う。森田さんは、お笑い好きの楽しい人というだけでなく、アツいハートで菜園を始めた人だった。地元の方々もいろいろな考えを持ち、それを実践なさっていた。
参加者のみんなとは、自然保護をしたいという思いが一致し、これからもお互い頑張ろうと思った。キナシベツの自然には、五感の全てを魅了された。
本当にありがとうございました。


「キナシベツワークキャンプに参加して」
日本大学生物資源科学部植物資源科学科4年
小山 敏正

自分は今まで人が手を加えて管理する敏の自然保護にしか関わってきませんでした。
しかし、キナシベツでは自然は自然のまま残すと言う本来の自然保護をしていて、それが自分には新鮮に感じました。
受け入れ先の源さん(榊原さんの愛称)は自然保護に対してすごく熱い方で、自然保護史セミナーでは自然海岸の保護から始まり、キナシベツ湿原の保護につながっていく経緯を聞くことができました。その話の中で自然保護は「人から人に訴えて自然を守る」「自然のことを知っている人が知らない人に教える」と源さんはおっしゃっていました。自分はその言葉に感銘し今でも心に残っています。これからの自然保護をしていく上での糧にしようと思いました。
キナシベツには北海道で唯一原生林が残されている場所で一般的に見られる二次林とは違い、深みのある森でした。巨木が倒れそこにコケが生えていたり、人が六人入れる穴が開いる巨木があったりと数々の始めてみる景色に感動ばかりしていました。ヤマブドウトという物も初めて見ました。
まるで映画の1シーンのようでした。実際、映画に使われたこともあったそうです。この原生林は私たちの共通の財産として次世代にも受け継いでゆきたいと思いました。
学生生活最後と言うこの時期に、このようなすばらしい体験をすることができたことは自分の中で一生の財産になりました。
キナシベツで学んだこと、自然保護について考えたことをこれからの社会人生活の中でも思い出しながら、日本の社会に少しでも良い影響を与えていけたらと思います。

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