2006年夏のワークキャンプ

キナシベツ自然保護地区

チーフコーディネーター 高木俊大(日本大学4年)

【開催地】(社)日本ナショナルトラスト協会 キナシベツ自然保護地区(北海道釧路市)

【開催期間】2006年8月18日(金)〜8月25日(金) 7泊8日

【スケジュール】

◆1日目(8/18)
午前 買い出し・移動
午後 開会式・オリエンテーション
夜  キナシベツ自然保護史

◆2日目(8/19)
朝  アイスブレイク
午前 海岸沿いの看板修復
午後 海岸のバラ線修復夜  
夜  チームワークセミナー

◆3日目(8/20)
一日 木道作製
夜  自然保護セミナー

◆4日目(8/21)
一日 野外セミナー
夜  野外セミナー振り返り

◆5日目(8/22)
一日 木道作製
夜  懇親会

◆6日目(8/23)
   午前 木道沿いの看板立て
午後 直別川遡上調査
夜  今後のワークキャンプで作製する看板の話し合い

◆7日目(8/24)
   一日 木道沿いの看板立て・木道作製
夜  ナイトハイク(高木)

◆8日目(8/25)
   午前 大掃除・閉会式〜現地解散

【作業報告】
○木道作成
直別駅前から湿原方向へ向けてキナシベツ湿原の存在を観光客や住民の方々に認知してもらうための木道を作製しました。材料にはカラ松の間伐材と電柱に使われていた丸太を使用しました。木材を運び、長さを揃え、枕木と板を敷き、釘で固定させて先へ…。途中、小川の上に橋を架けたり階段を作ったりと、一縄筋ではいかない場面も見られましたが、53mあまりの木道を完成させることができました。この木道は次回夏のワークキャンプで開通する予定です。

○海岸沿いの看板修復
過去のワークキャンプで作製された看板が老朽化によって折れてしまっていたため仮の杭で固定しました。次回春のワークキャンプで新たな看板を作製し、夏ワークキャンプで立て直す予定です。23日に話し合われた「今後のワークキャンプで作製する看板の話し合い」のための下見も兼ねて行われ、周りに散らばる人が持ち込んだと思われるゴミがとても印象に残りました。


○海岸のバラ線修復
過去のワークキャンプで町道沿いと海岸沿いに張られたバラ線が老朽化によって切れてしまっていたため新たに張った作業と、海岸沿いに新たに柵を作った作業、ベンチの修復などを行いました。後日、修理したベンチに腰を掛ける人を見掛け、作業の成果を直に知ることができました。


○木道沿いの看板立て
前回春のワークキャンプで作製した、キナシベツに生息する植物などの9枚の看板 
を作成中の木道沿いに設置しました。丸太の杭を立てるために穴を掘り、杭をしっかりと固定させ、ドリルで看板を取り付けた作業で、周囲の自然と見事に調和した看板を設置することができました。


○直別川遡上調査
   キナシベツ湿原沿いを流れる直別川の健康状態を調べるための調査です。サケやカ 
ラフトマスの遡上は見られませんでしたが、46cmのアメマスやヤマメ、ヤツメウナギなどを確認することができ、河川の健康が保たれていることが分かりました。


【その他の活動】
 ☆セミナー
ワークキャンプの醍醐味の一つであるセミナー。まずはワークキャンプの作業を効率良く進めるために必要不可欠な“チームワーク”についてのセミナー。セミナー後の作業では言われなくても互いに声を掛け合う姿が見られ、リズム良く作業が進められました。次のテーマは私たちがキナシベツに来た理由“自然保護”。自然保護って?自分たちに何ができるの?様々な意見交換ができ、その後の作業や今後の活動にも自信を持って望もう、という強い意識が参加者の中に芽生えたのです!

☆野外セミナー
   榊原さんにキナシベツ自然保護地区を隅から隅まで案内して頂きました。昨年の野外セミナーでの熊のうなり声、聴覚の鈍る雨…。例年以上に緊張した雰囲気でしたが幻想的な自然を体験することができました。笹を掻き分け進んだ二次林、霧が濃く先が見えなかった湿原、腰まで水が浸かりながら渡った直別川、そして熊対策の鈴が鳴り響いた緊張の原生林など、そこには一言では書き表せない程の“非現実的”な時間が流れていました。


 ☆懇親会
   地域の方々、自然保護活動をされている方などが集まって下さり、私たちの活動や道東の自然、仕事についてなど、ジンギスカンを囲みながらお話しすることができました。学生がこの様な活動をすることに共感を持って頂いているそうで、より地域に根差した活動の展開を目指そうと感じました。

☆ナイトハイク
  夜、海へと続く一本道を一人で歩くナイトハイク。キナシベツワークキャンプではお馴染みです。霧が濃く、正に“一寸先は闇”の状態!視覚に頼らない状況。時々聞こえる鹿の「ピィッ!」という鳴き声。人が創り出す音が徐々に聞こえなくなり波の音が近付いてくる。参加者は暗闇の中、一歩一歩を踏み締め何を感じたのでしょうか。

【ワークキャンプ全体】
参加者が5名という少なさでしたが、それを感じさせない程、各作業はスムーズに進みました。初日から参加者同士打ち解け、作業中やセミナーでは積極的に意見交換をすることができました。体力的に厳しい作業が続きましたが、ケガも病気もなくワークキャンプを終えることができたのも、参加者一人一人が高い意識を持てたことの表れだと思います。

【参加者の声】
◆「キナシベツで感じたこと」 井端啓人(東京理科大学 理工学部 土木工学科3年)

「大満足!」これがこのワークキャンプを通して率直に言える感想である。このワークキャンプに参加したそもそもの理由は、夏休みという長い休暇の間に学生の間でしか体験できない色々なことをしてみたかったからである。その体験を通し、自分を磨き、さらには自然のために何かできるのであればこれほど良いことは無い。そう思い僕はこのワークキャンプに参加した。

正直、初めは不安・緊張の連続だった。今回のワークキャンプでは初参加者は僕一人。周囲のみんなはベテランぞろい。最初は大丈夫なのか〜とか思っていたけど、旅が始まるとほっと一安心。周りのみんなはいい人ばかり!僕が分からないところは一つ一つ丁寧に説明してくれたし、めちゃ親切にしてくれました。本当に感謝です!

このワークキャンプを通して自分は何を学ぶことができたのだろうか。自然を守ることの大切さ。自然を守ることの大変さ。そもそも自然保護って何?などなど毎日の自然とのふれあい・みんなとのふれあいを通して学ぶことは本当にたくさんあった。自分の自然に対しての知識の無さも痛感させられた。

そして何より感じたことは、人は一人じゃ生きていけないということ。人はみんなが協力して生きていくんだと言うこと。これは今回実際に行った木道作りやバラ線張りの活動中や、げんさん・森田さん・仲間のみんな・キナシベツの方々みんなとの会話のときに本当に感じた。人って暖かいんだなって。このキナシベツ独自のゆったりとした時間・周囲の自然がよりいっそうその大切なことを思い出させてくれたのかも知れない。 実際、今回のワークキャンプを通して僕が自然に対して貢献できたことなんて本当に本当にちっぽけな事なのだと思う。でも、自然の大切さを周りの人々に話し、伝えていくことで少しは何かの役に立つことができるのではないかと思う。


◆「Only One キナシベツ!」 松浦孝憲(千葉大学 園芸学部 緑地環境学科4年)

このワークキャンプには夏の北海道を見てみたい、夏休みを有意義に使ってみたいといった理由で参加しました。実際に参加してみて、今まで見たことがないような雄大な自然に「日本にもこんな土地が残されているのか〜」と感動しました。そしてワークキャンプに一緒に参加したメンバー、受け入れ先の方たちと共有した時間は大変、大切な経験になりました。多くの人の努力そしてつながりがあってこそ、キナシベツという美しい空間が守られているという事実を知りました。
 
作業は木道作りというハードな作業でしたが、自分が作ったものが形となっている姿を見られたので充実して作業に取り組めました。もちろん、夜の飲み会での話が楽しかったのは言うまでもないですけど・・・
 
今までどこか旅行しても記憶として残らないようなことが多かった中で、このキナシベツは深く記憶に残る時間になりました。それはただ観光するというだけではなく、このキナシベツという土地で作業という形で木道を残せ、そして人との交流があったと思います。
 
短い期間でしたがこのキナシベツは自分自身、第2のふるさとのように感じられました。「いつかキナシベツにまた、来ます。」そんなことを感じられたワークキャンプでした。

☆−編集を終えて−☆(チーフコーディネーター 高木俊大)
  今から二年前の夏。キナシベツワークキャンプに参加したことから僕の人生は大きく方向転換していきました。今回のキナシベツワークキャンプは三度目でしたが、毎回「今回が一番良かった」と思ってしまいます。終わった直後だからでしょうか。特に今回は榊原さんから感謝状を頂き、自分がキナシベツワークキャンプに参加することで現場貢献ができているということを実感することができました。
  キナシベツでの経験が自分の中で何よりも大きな経験であり、人生の指針として大きな役割を担っています。この場をお借りして、キナシベツワークキャンプに関わる全ての方に御礼申し上げます。
受け入れ先の方が言われた言葉「学生が活動することで、少しでも多くの方にこの場所の大切さを知ってもらいたい。」僕の中でこれ以上に心に残った言葉はありません。