2005年春のワークキャンプ

キナシベツ自然保護区

チーフコーディネーター 吉岡 杏子 (千葉大学理学部化学科 2年)

【 開催地】
 (社)日本ナショナルトラスト協会・キナシベツ自然保護地区
  (北海道白糠郡音別町直別)

【開催期間】 2005年2月18日(金)〜2月28日(土) 10泊11日


【スケジュール】

18日 釧路空港に集合!
 開会式
 オリエンテーション
 アイスブレイク
19日 カンジキ作り
 鳥セミナー
20日 オオワシ・オジロワシ生息調査
 案内板作成
 キナシベツ自然保護史セミナー
21日 青鷺コロニー調査
 青鷺セミナー
 案内板作成
22日 植物セミナー
 野外セミナー
 野外セミナーふりかえり
23日 案内板作成
 自然保護シミュレーション
24日 自然史調査
 ナイトハイク
25日 案内板作成
 自然保護セミナー
26日 案内板作成
 餅つき、懇親会準備
 懇親会
27日 案内板作成
 自然史調査
 観察路設定
28日 片付け、大掃除
 閉会式


【活動内容】

○オオワシ・オジロワシ生息調査
 鉛中毒によって猛禽類が死亡する件数が増えています。毎年全国一斉に、鉛中毒の
猛禽類への影響をオオワシ・オジロワシの個体数確認によって調査しました。
 一斉調査は午前中のみですが、午後はキナシベツ独自の場所も回り、調査しまし
た。
 昨年ほどではないものも、今年も雪が降ったため視界が悪かったですが、漁港でオ
ジロワシ1羽を確認、その他にノスリ、トビなどを確認しました。

○青鷺コロニー調査
 カラマツ林に営巣する青鷺のコロニーの、巣の数、大きさなどを調査しました。
 今年は88個の巣が確認されたので、昨年の71個からかなり増えました。
 青鷺コロニー調査には、北海道での青鷺の第一人者であられる松永氏にも参加して
いただき、調査後には青鷺についてのセミナーを開いてくださりました。

○自然史調査
 キナシベツ自然保護区への人間の影響具合をみる調査で、毎年ワークキャンプで一
部区域ずつ調査し、地図(環境実態図)に表しています。今年は牧場周辺を調査しまし
た。
 牧場周辺であったので、人間の影響が甚大な地域が多かったですが、調査中にオジ
ロワシやノスリが現れ、皆で観察をした場面もありました。

○カンジキ作り
 トラストの家にあるカンジキの補充として、昨年と今年とでカンジキを12台製作し
ました。昨年の作業で曲げておいた竹を、2つ組み合わせて縄で編みました。作り方
はキナシベツを愛する会のメンバーでもある伊藤氏に教わりました。
 出来上がったカンジキは青鷺コロニー調査や自然史調査などで早速使われました。

○案内板作成
 地元の人や旅の人にキナシベツの良さをわかってもらうきっかけになるようにと思
い、直別駅前の広場と自然観察路を示す看板を、2班に分かれて1台ずつ作成しまし
た。
 デザイン決めや土台作りから行なったため予定していたよりも大幅に時間を使いま
したが、その分素敵な看板が出来ました。
 これらの看板は今年の夏のキャンプで立てる予定です。

○野外セミナー、ナイトハイク
 自然保護をする上で、保護しようとする自然を知ることが第一です。
 野外セミナーではクロスカントリーを履いてキナシベツの多様な自然を歩いて廻り
ました。湿原、川、海、原生林が集まっている様子を目の当たりにし、またそれらを
存分に楽しみました。釧路でレンジャーをなさっている若山氏も一緒に回ってくださ
り、インタープリテーションをしてくださいました。
 ナイトハイクでは満月の下、牧場周辺を歩き、静かな夜のキナシベツを体感しまし
た。


【参加者の声】

●小池 陽子 (千葉大学園芸学部緑地環境学科 2年)
「考えるだけでなく、動きたい。」これが今回ワークキャンプ参加を決めた最大の理
由である。私は自然保護や植物などにとても興味があるので、それらについてもっと
知り、関わってみたいという気持ちが前々から高まっていた。しかし、どう行動を起
こせばいいのかわからず頭でばかり考えていて何もしていない自分の状態に歯痒さを
感じていた。

ワークキャンプ中の生活は私に毎日刺激を与えてくれた。自分の目で見て、肌で風や
寒さ・暖かさを感じ、耳で鳥の鳴き声や風、海の音を聞くなど五感を使い身体全体で
自然を感じたことは私の中で何かが変わるきっかけとなった。特に、雄大な山々、
海、木々に囲まれながら真っ白な雪の上を一歩一歩踏みしめて進んでいくクロスカン
トリーでは改めて、自然の壮大さ、素晴らしさ、大切さを感じ、自分の中で大きな基
盤ができた気がする。

上記のように、ワークキャンプでは自然から得たことがたくさんあったが、仲間との
生活からはより多大なことを学ぶことができた。私は今までは自分の考えを発言しな
いことが多かったが、セミナーや普段の生活の中で自分の考えを相手に伝えなければ
ならない場面が多々あった。初めは自分の思いを外に出すことへの不安や困惑が大き
かったが、仲間が自分の意見を一生懸命伝え、他人の意見を真剣に聞く様を見て、意
見を言い合う素晴らしさ、楽しさに気付くことができた。また、さまざまな人のやさ
しさに触れ、「思いやる」温かさを実感した。そして、互いの思いやりは個々にエネ
ルギーを与え、そのエネルギーを集結させることは、個人の力だけで作るモノより、
より深く、濃密なモノの創出へとつながると思った。

このように、新しいことをたくさん発見し、また大切なことを再認識できたワーク
キャンプでの仲間やさまざまな人、キナシベツの自然との出会いは私に大きなエネル
ギーを与えてくれた。


●東出 大志 (新潟大学農学部清算環境科学科 2年)
大学で自然について学んではいるものの、実習や演習は少なく講義が主体となってい
ます。講義は大切だけれど、そこから得られる物は論理でしかなく、実際に自然を肌
で感じてみないことには実体を見失ってしまうような気がします。そのようなことを
考え、2年になってから様々な活動に参加しています。実際のところは勉強というよ
り、趣味でやっているわけですが、今回も非常に充実した日々を送ることができまし
た。

WCは初参加ですが、自分にとって今回の活動での成果は、様々な人との繋がりでし
た。当初は自然についての知識と経験の習得を目的にしていましたが、それよりも同
じような目的意識を持った仲間と11日間過ごして得たものが最も大きかったように思
います。特に、自然について真剣に人と話し合うことなど今までほとんどなかったの
で楽しかったし、とても勉強になりました。大学の友達とは自然について真剣に話を
することはあまりないので、WC中に出会ったばかりの人とセミナー以外でも真剣に話
をできたことは素敵なことだと思います。

当初目的としていた知識や経験についても、現地の人に様々学ぶことができました。
特に鳥についてはWC期間中、毎日のように観察していましたし、今回の活動で行った
案内板作りも、みんなで楽しく良いものができたと思います。直別駅前に案内板が立
つ日が楽しみです。その他にもWCでなければできなかったような様々な体験をするこ
とができました。かんじき作り・調査・クロスカントリー・餅つき・案内板・セミ
ナーなど本当によい経験となりました。

一人暮らしを始めた時に全くホームシックになどならなかったのに、WCが終わってト
ラストの家が恋しくなったのは、今回それだけ楽しかったということだろうと思いま
す。みんなありがとう。またきっとWCに参加します。


 今回のワークキャンプは男性5名、女性5名の計10名の参加者で行ないました。参加
者は関東圏からだけでなく、新潟県、愛知県からの参加者もありました。
 皆、自然に対する情熱や自然保護への関心が高く、作業やセミナーでは真剣でし
た。

1.カンジキ作りに挑戦だぁ! 2.やったぁー!カンジキ完成!

3.只今、アオサギコロニー調査中

4.野外セミナー「キナシベツ湿原へしゅっぱぁーっつ!!」
5.この丘からはキナシベツ湿原が一望できます♪ 6.氷点下の中での看板作り。寒いけど、頑張るぞ−!
7.やったね!看板完成!いいものが出来ました♪ 8.最終日の朝に皆でみた朝日は、本当に綺麗でした…