2005年夏のワークキャンプ

鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ

チーフコーディネーター 野中由美子 (フェリス女学院大学3年)

鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリワークキャンプは、釧路湿原の保全や、タンチョウの保護に協力することを目的として実施されました。

【 開催地 】 (財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ
(北海道阿寒郡鶴居村字中雪裡南)

【 開催期間 】 2005年8月24日(水)〜31日(水)7泊8日

【 スケジュール 】
8月24日(水)
釧路駅集合。
ネイチャーセンターへ到着後、自己紹介とオリエンテーション
ボランティアセミナー

8月25日(木)
 タンチョウ生息環境復元域での巣の調査、ハンノキの萌芽調査
 植物・鳥セミナー

8月26日(金)
看板・プレート製作
(アイディア出し、看板・プレートデザイン決め)

8月27日(土)
ザリガニ釣り(移入種駆除)
看板・プレート製作(製作)
懇親会

8月28日(日)
看板・プレート製作(完成・設置)
 自然保護への関わり方セミナー

8月29日(月)
野外セミナーをしながら根室へ
別寒辺牛・早瀬野鳥保護区の看板立て
野外セミナー振り返り

8月30日(火)
渡邊野鳥保護区フレシマの看板立て

8月31日(水)
宿泊所とサンクチュアリの大掃除
ワークキャンプ全体の振り返り
解散

【 活動内容・成果 】
@巣の調査
今年もタンチョウの営巣が確認された温根内早瀬野鳥保護区にて、巣の位置や巣材、周辺植生等の調査のお手伝いをしました。

Aハンノキの萌芽調査
ハンノキ林の増加は、湿原の乾燥化を表しています。ハンノキ林が増えると、タンチョウは巣を作れなくなります。日本野鳥の会が1990年に設置した早瀬野鳥保護区温根内でも、周辺開発による乾燥化のため、ハンノキ林が増えて1994年以降タンチョウが巣を作らなくなりました。鶴居サンクチュアリでは、タンチョウが再び巣を作れるように、ハンノキ林を除去して本来のヨシ原に戻す、という環境管理を鶴居サンクチュアリでは1999年から行なっています。今回のワークキャンプでは、ハンノキ伐採後の植生がどう変化しているかを調査しました。

Bネイチャーセンターの看板・プレート製作。
サンクチュアリの給餌場には年間数万人が訪れますが、その内ネイチャ―センターに来館するのは約3000人です。ネイチャーセンターにもっと多くの人達に足を運んでもらうためにはどうしたらよいか、みんなでアイディアを出し合って一から考えました。そしてネイチャーセンター玄関口に表札の看板を、給餌場に誘客用のプレートを製作しました。

C保護区の看板立て
野鳥の生息地の保全を目的として、日本野鳥の会では、買い取りによる野鳥保護区の拡大を行っています。しかし、現状では保護区の境界を明確に示すものがありません。一般の人やハンターが間違えて入ってしまわないように、「立入禁止」の看板を2本別寒辺牛・早瀬野鳥保護区に、8本渡邊野鳥保護区フレシマに設置しました。

D ザリガニつり(移入種駆除)
在来種のニホンザリガニをおびやかす、移入種(外来種)ウチダザリガニを捕獲しました。

≪その他の活動≫

[1] セミナー
夜、夕食後に行う勉強会のことです。自然保護、ボランティアに関する基本的な知識と、実際にボランティア活動をしていくうえでの技術を学ぶ場です。今回はボランティアセミナーや植物・鳥セミナー、自然保護への関わり方セミナーなどをおこないました!

[2] 野外セミナー
レンジャーさんに案内していただきながら、温根内ビジターセンターと音羽橋、下久著呂地区、コッタロ湿原、春国岱をまわりました。
鶴居村にあるもうひとつの給餌場の管理人渡邊トメさんからは観光客のマナーについて、タンチョウの食害にあっている農家の方からは、被害の実態を聞き込みました。

[3] 懇親会
今回は鶴居村のかんきょう会議のメンバーの方々が開催したサマーキャンプに参加させていただきました。獣医さん、環境省職員、酪農家、動物カメラマン、エコツアーガイド、ネイチャーセンターの自然観察指導員など多くの方々からお話を聞くことができました。

《参加者の声》

◆ 杉田 峻介(京都大学総合人間学部国際文明学系2回生)

 北海道の澄んだ青空の下で過ごした8日間は、素晴らしい経験になりました。
 僕がこの鶴居ワークキャンプに参加して学んだことは、大きく2つに分けられます。一つは自然から学んだこと、もう一つは人から学んだことです。

 まず、「自然から学んだこと」です。今回、ハンノキの萌芽やタンチョウの巣の調査のために湿原の中に分け入りましたが、そこは想像していたよりはるかに厳しい世界でした。藪に道をはばまれ、深い泥沼に足をとられ、前進するにも一苦労。ここは、人間以外の生き物の領域なのだということを感じました。しかし、豊かに水をたたえた小川や、風にそよぐヨシ原には、心が和みました。
 そして、野外セミナーでは美しく広がる湿原を一望し、看板立ての作業に行った根室の野鳥保護区フレシマでは、緑の丘と青い海が織り成す絶景に感動。また、様々な鳥たちやキタキツネ、エゾシカ、そしてタンチョウとその求愛ダンスなど、多くの生き物の営みを目にして、その世界を人間が侵すことのないようにするには何が大切か、大いに考えさせられました。

 もう一方の、「人から学んだこと」。今回のワークキャンプでは、レンジャーさん方を始めとして、環境省の職員の方、カメラマンの方、野鳥の会の職員の方など、様々な職業でそれぞれタンチョウや道東の自然に関わっておられる方々から、直接貴重なお話を聞く機会が多くありました。作業をしながら自然保護の方策について伺ったり、「タンチョウは家族のようなもの」という農家の方の言葉に感銘を受けたり。また「鶴居村環境会議」のメンバーの方々との懇親会では、そのバイタリティーに圧倒されました。まさに普段聞くことのできないお話を聞けて、本当に勉強になりました。
 そして何より忘れてはならない、一週間寝食を共にした仲間たち。つい数日前に初めて会ったとは思えないほど和気あいあいで、しかもみんな驚くほど自分の持ち味を生かしてよく働く。ハードなスケジュールでしたが、無事調査や看板製作等の作業を完了することができたのは、まさにお互いがお互いを補い合う「協力」の結果だったと思います。また、みんな自然保護や生き物に対して熱い気持ちを持っていて、そんな仲間から学んだことは数え切れません。

 この素晴らしい8日間、このワークキャンプを運営してくれた人たち、お世話になった方々、共に過ごした仲間、そして道東の大自然に本当に感謝しています。たくさんの感動をありがとうございました!

◆池田はるか(酪農学園大学環境システム学部地域環境学科4年)

鶴居ワークキャンプは思っていた以上に楽しくて、感動して、幸せでした。
私が以前家族で釧路湿原に来た時は、一面草原が広がるばかりで湿原がよく分からず、残念な思いをしました。しかし、今回のワークキャンプでは胴長を履いて湿原を歩き、肌で感じる事が出来ました。野外セミナーでは湿原を散策したり、様々な湿原を眺めたり、地元の方のお話を聞き、釧路湿原をより深く知る事が出来ました。
セミナーではメンバーと意見を出し合う中で、感じ方の違いに驚きました。私には思い付かないような素敵な感じ方や考え方がいっぱいで、とても勉強になりました。みんなで共有した思いをずっと持ち続けていきたいです。みんなで一緒に過ごした8日間は笑いがいっぱいで毎日が新鮮で、とても楽しかったです。
野外セミナーで連れて行って頂いた根室の保護区はどこも本当に綺麗でした。絶景の春国岱、美しい高原と海の広がるフレシマなど、どこも言葉では伝えられないくらい、本当に素敵な場所でした。いつまでも眺めていたかったです。
そして野鳥の会のレンジャーさんがそんなに素敵な土地をたくさん買っていた事に驚きました。フレシマや春国岱、ソウサンベツなどの保護区がずっと守られるという事が嬉しいです。トラストという土地を買って自然を守るお仕事の醍醐味や魅力を感じる事が出来ました。
今回のワークキャンプは素敵な人や自然がいっぱいで、全部胸に焼き付けておきたいです。本当に大切な経験をする事が出来ました。
ボランティアをしに行ったのに与えて貰ったものが多すぎて、とてもお返ししきれませんでしたが、これからの頑張りで返していけたらと思います。
鶴居・春国岱のレンジャーの皆さん、大変お世話になりました。どうもありがとうございました。参加したみんなも、本当にどうもありがとう。

1.ハンノキの萌芽調査中。湿原の中切り株を探して、
萌芽の数を記録します。
2.蚊やアブなどから身を守るためにはこれが一番。
日よけにもなる!「やっぱほっかむりだよね〜♪」
3.ネイチャーセンターの来館者を増やすためには?
みんなでアイディアを出し合います。
4.看板作成中。みんな、真剣です。
5.看板完成!!ネイチャーセンターの玄関口に設置しました。 6.プレートも完成☆これを見たら、思わずネイチャーセンターに
立ち寄っちゃう?!
7.力を入れて...「えいっ!!」みんなで協力し合って、
保護区の看板を立てます。
8.フレシマ保護区で記念撮影☆
このすばらしい景色はきっとずっと忘れない。