2004年春のワークキャンプ

鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ

チーフコーディネーター 赤瀬悠甫(横浜国立大学3年)
(写真は、本文の下にあります!)


鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリワークキャンプは、釧路湿原や、タンチョウの保護に協力することを目的として実施されました。

【 開催地 】 (財)日本野鳥の会 鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ 
                 (北海道阿寒郡鶴居村字中雪裡南)

【 開催期間 】 2004年3月10日(水)〜17日(水)  7泊8日

【 スケジュール 】
3月10日(水)
    現地へ移動後、自己紹介とオリエンテーション
    スライド上映「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリの活動」
    セミナー : 環境教育セミナー

3月11日(木)
    作業 : タンチョウ生息環境復元域での萌芽除去
    セミナー : 自然保護セミナー
3月12日(金)
    ≪タンチョウのねぐら早朝観察会≫
    作業 : 紙芝居作り
             { テーマ決め・情報収集・情報まんだら作り・コンセプト決め }
3月13日(土)
    作業 : 紙芝居作り
                { 絵コンテ作成・ストーリー決め }
3月14日(日)
    作業 : 紙芝居作り
                { 下書き・色塗り・台本作成 }
3月15日(月)
    作業 : 紙芝居作り
                { 色塗り仕上げ・台本完成・仮上演 }
    ≪地元の方々との懇親会≫
3月16日(火)
    ≪野外セミナー 〜釧路湿原ぐるっと一周〜≫
3月17日(水)
    宿泊所とサンクチュアリの大掃除
    セミナー : 野外セミナー振り返り
    セミナー : ワークキャンプ全体の振り返り
    解散

【 活動内容・成果 】

◆『タンチョウ紙芝居』づくり

今回のメイン作業として実施したのは、タンチョウを題材とした紙芝居作り。来館者や学習者に、タンチョウやサンクチュアリの活動についてもっと興味を持ってもらいたい!そんな思いを込めた、サンクチュアリ普及教育事業のアイテム作りです。

実際の作業では、2つの班に別れて製作を行いました。与えられたテーマは「タンチョウについて」「サンクチュアリの活動について」の2つのみ。盛り込む内容から考えはじめなくてはなりません。

喧々諤々話し合い、時には深夜まで作業が続くこともありました。そして3月15日、なんとか2本の紙芝居「ぼくらの理想郷はどこ?」と「タンタン物語〜ぼくと  ごはんと  湿原と〜」が完成したのです!

この2本は今後、鶴居サンクチュアリで環境教育のために使っていただけるそうです。


◆タンチョウ生息環境復元域での萌芽除去

タンチョウが繁殖に利用するのは、開けた湿潤な土地。サンクチュアリからちょっと離れた場所にある温根内早瀬野鳥保護区はそんな環境が整ったヨシ原でした。しかし、上流部丘陵地帯の開発等により土砂が流入。乾燥化が進んだ湿原にはハンノキ林が進入し、タンチョウが巣作りできない環境になってしまったのです。

そこで、99年から始まったのがハンノキ林を伐採してヨシ原に戻そうというプロジェクト。しかしこのハンノキ、1度切り倒しただけでは切り株から萌芽(二次的な芽)がでてきて再生してしまいます。この再生を抑えるために、今回は半日かけて萌芽を手鋸で切っていくことになりました。

――当日は快晴。暑さを感じるほどの陽気の中で作業は進みます。
しかしこの作業、ある事情で中断せざるを得ませんでした。休憩中、私たちが作業を行っているその現場に、なんとタンチョウのつがいがやってきたのです。警戒声を上げ私たちを威嚇したタンチョウは、茂みの向こう側に降り立ちました。

復元した土地に、本当にタンチョウが舞い戻ってきてくれた!その喜びを胸に、私たちはタンチョウを驚かさないよう、そっと引き上げていきました。


◆野外セミナー

タンチョウの住む釧路湿原とはどういった環境なのか?そして、その現場に潜む問題点とは一体何なのだろうか?それらを実際にこの身で体験するために、まる一日かけて音成レンジャーに釧路湿原を案内してもらいました。

広大な釧路湿原を見下ろす北斗展望台から野外セミナーはスタート!温根内ビジターセンターでは解説員の若山さんに案内していただきながらクロスカントリースキーで湿原を闊歩闊歩。

もう一つの給餌場・鶴見台ではまだまだ現役パワフルおばあちゃん、管理人のトメさんからマシンガントークをお聞きしました。

久著呂川の上流下流では、行政の施策に翻弄されてしまった自然破壊の現場を見る中で、自然再生事業や農地防災事業といった問題も考えさせられます。

原生のまま残るコッタロ湿原を経て、最後は細岡展望台へ。あいにく夕陽は見えませんでしたが、モノトーンの湿原は静かな広がりを見せてくれました。



【 参加者の声 】

●城谷歩惟(しろたにあい・日本大学1年)

タンチョウが見たかった。そんな思いでこのワークキャンプに参加したが、目的地到着2秒後にこの夢はあっけなく叶った。タンチョウ、いすぎ。タンチョウが見たいから鶴居ワークキャンプがいいと思うそこの貴方。どんなに野生動物をよせつけない体質でも大丈夫ですよ。しかし、タンチョウが見たいだけで来た自分は、思いの外、この地で多くの事を考えることとなる。

さて、我々の今回のワークキャンプでの任務は、いかに食費を浮かせて1週間やりくりするか、ではなく、それもあるけど、釧路湿原の自然にふれる中で、タンチョウ紙芝居を作ることだった。サンクチュアリではタンチョウの保護活動をしており、この季節はもっぱら給餌活動をしていた。

初日にレンジャーさんが言った事を覚えている。『今ここでやっている活動は、タンチョウのためにこうしたらいいだろうってことだけど、必ずしも正しい事とは限らない。でも、ほっておけばタンチョウはどんどん数を減らしていってしまう。』と、そしてタンチョウを守ることは釧路湿原を守ることだ、と。

自分の中で一番心に残った事件は、メンバーの一人が毎夕食で鍋を抱えて豪快に顎を動かして飲む様、ではなく、それもあるけど、最終日前日にレンジャーさんに連れられて湿原をグルっと一周したことだった。

今回のワークキャンプでは湿原に流れる水流をたどった。そこには大きなドラマがあった。湿原の成り立ちや今抱える問題を生で感じることができたのだ。湿原が人間にとって必要かどうかは分からない、でもそこには確かに多くの生き物達が存在し、他とは違う環境が広がっている。これを残すのはなぜか、とか、どうやって守るか、とか難しいこと考えるよりも、この美しい光景がいつまでもあればいいなぁって思う。きっとみんなもそう思った。

結局、タンチョウへの給餌がいいのか悪いのか、答えがみえないまま出発日が来てしまった。それは、毎日行っていた温泉“つるい”の湯が何故か泡立っている理由と同じくらい悩ましかった。最初は、ただタンチョウが見たかっただけなのに・・・。それでもこうやって仲間達と日々、いろんなことを考え行動しながら過ごした日々はとても充実していて大満足だった。絶対他では手に入らない経験だと思う。レンジャーさんや、地元の方々、そしてメンバーの皆様、楽しい時間を本当にありがとうございました!


●平井太洋(ひらいたかひろ・江戸川大学1年)

自分がこのワークキャンプに参加した理由は、正直恥ずかしいことに「北海道にいってみたい」「タンチョウを見たい」というようなほとんど旅行気分でなにも考えずにこのワークキャンプに参加しました。しかしそのおかげでとても多くのもの得ることができ、自分を変えてくれるきっかけになりました。

鶴居での出来事はなにもかもが新鮮で、鶴居の人々のやさしさ、自然のすばらしさ、偉大さ、夜空の星の美しさを生で感じることができ、なにより空を飛ぶタンチョウの姿は本当に美しく今でも心に残っています。

そしてタンチョウの美しさを知るだけでなく、タンチョウに起きている給餌の問題、農業被害の問題、生息地減少の問題などがあることを知ることができ、そしてそれらの問題は人と自然との問題であり安易に答えがでるものでなく、とても深く考えさせられ、自分の無知さ、考えの甘さ、視野の狭さを実感させられとても良い刺激になりました。

何よりも一番刺激になったのは鶴居のメンバーの自然に対する思いや姿勢がとても大きく、自然が本当に大好きだということがすごく伝わってきて、そんな彼らの直向さがいままで止まっていた自分を動かさしてくれたということです。

鶴居に旅行に行っただけでは、こんなにたくさんのことを得ることはできない。本当にワークキャンプに参加してよかったと思います。

このワークキャンプに参加しなければ自分は無知のまま何も考えずに人生を終わっていたと思います。この鶴居ワークキャンプは自分の人生の転機になってくれました。
学生時代にこのワークキャンプに参加したことをとても誇りに思います。そして一週間こんなすばらしいメンバーと同じ地、同じ時間を過ごせたことに心から感謝します。

タンチョウの説明を真剣に聞く参加者・・・ タンチョウの話をする、音成レンジャー
ハンノキの萌芽を切っています! 作業がひと段落。みんなで記念撮影!
タンチョウの紙芝居を作成中!
音成レンジャーの不適な笑いの意味は・・・?
ようやく完成した紙芝居!!
野外セミナーの一場面
何十年も給餌を続けてきた、渡部トメさんと記念撮影!
細岡の湿原展望台でも一枚!


新聞にも載りました!!