2003年夏のワークキャンプ

霧多布湿原

チーフコーディネーター 赤瀬悠甫(あかせゆうほ・横浜国立大学2年)
(写真は、本文の下にあります!)


<開催地>
 霧多布湿原・NPO法人霧多布湿原トラスト(北海道厚岸郡浜中町)

<開催期間>
平成15年9月14日(日)〜21日(日)

<スケジュール>
9月14日(日) 現地へ移動/買出し/荷物整理/オリエンテーション
                    アイスブレイク “自己紹介シート”

     15日(月) 町内オリエンテーション
                    作業 【自然解説版作成/仲の浜木道撤去】
                    セミナー “リーダーシップ・トレーニング”

     16日(火)  地元漁師さんのもとで昆布干しのお手伝い
                    作業 【仲の浜木道撤去】
                    セミナー “自然保護セミナー”

     17日(水) 作業 【自然解説版作成】
                    セミナー “クリティカルシンキング”

     18日(木) ≪野外セミナー 〜体感する湿原〜≫
                    セミナー “漁師の手業セミナー”

     19日(金) 作業 【霧多布湿原センター標識立て】
                    セミナー “街づくりと自然保護 〜地元の方々から本音を聞く〜”

     20日(土) 作業 【仲の浜木道設置】
                    ≪交流会 〜トラスト理事の方々の想いを聞く〜≫

     21日(日) セミナー “ワークキャンプ振り返り”
                    大掃除 他


<活動内容・成果>

――[1] 作業 //
◆仲の浜木道撤去・新設
 霧多布湿原トラスト前に位置する仲の浜木道が古くなって劣化し、安全上問題となる箇所も出てきたため、今回の補修を行うこととなりました。仲の浜木道は霧多布湿原の第一号木道であり、湿原から人を遠ざけるのではなく、むしろ人々に湿原を好きになってもらうことでこの湿原を守っていこう、という想いでつくられた木道です。
 今回の撤去&新設区間は170m。まずは木板と枕木からなる木道に刺さる五寸釘を引き抜き、長い板と丸太のような枕木を運び出します。湿原の真横で僕らが抱え込んだ廃材は、ぼろぼろに腐っていました。
 新設は、湿原トラストの理事の方々との共同作業です。鉄鎚とチェーンソーを振るい、一枚、また一枚と新しい板を打ち付けます。完成したのは、雲間から差し込む夕日が湿原を照らす頃でした。

◆自然解説版作成
 仲の浜木道を訪れる人々、特に子どもたちにもっと霧多布湿原のことを知ってもらいたい!という思いを込めて、『きりたっぷものしり博士』と銘打った霧多布湿原の解説版を9枚作成しました。作業はこの『〜ものしり博士』というタイトルを考えるところから始まり、ニス塗り、下書き、ペンキ塗り、掛けるための穴あけ、という工程を踏んで完成です。

◆霧多布湿原センター標識立て
 霧多布湿原センターは道路沿いの丘に、湿原を見渡せる様に建っています。ここに来るお客さんはほとんどが車での来場であり、2箇所の駐車場もあります。ひとつは丘の下の道路沿い、もうひとつはゲートを通って丘まで上がったところ。ですが、これまでは丘の下の駐車場にしか標識がなく、初めて利用する方には上にも車を停められるということが、わかりにくい状況だったのです。 センターには、お年寄りの方も多く訪れます。そんな方々にとっては、下の駐車場に車を停め、わざわざ丘を歩いて登ってセンターに行くのはとても大変なことなのです。そんな方々にも丘の上の駐車場も使っていただく為に、より多くの人に垣根なく霧多布湿原センターを利用してもらい、この湿原の素晴らしさを知ってもらう為に、そんな想いを込めて丘の上の駐車場をハッキリと示す、大きな標識を立てました。


――[2] セミナー //
◆野外セミナー
 自分たちが保護しようとしているこの霧多布湿原には、いったいどのような自然が残っているのか、それを肌で体感するのが「野外セミナー」です。現地コーディネーターの長岡さんに連れられて、まず訪れたのが“鬼太郎部落”。さながら妖怪のようにも見えるヤチボウズ(その姿は下の写真でどうぞ)が、
あちらこちらに頭を出している不思議な場所です。
 その後も、一般の方々に自然解説をする際のポイントや、自然に関する新たな発見を長岡さんに気付かせてもらいながら、お花畑・塩性湿地・湿地回復実験地・高層湿原を、自分達自身の肌で直接体感しながら巡りました。
 みんなそれぞれの体験の中から、何故霧多布湿原を守らなくてはならないのかを、また、どのようにしていけばよいのかのヒントを、何らかの形で持つことが出来たようです。

※野外セミナー以外に、昆布干しのお手伝いの際や青年団の方をお招きした夜、トラストの方々との交流会等を通して、地元の方が一体どのようなことを普段考えているのか、ということの本音を伺うチャンスも数多くありました。その中で、自分たちの想いとのギャップも感じたようです。

※その他、自分たち自身の視野を広めるためにも、夜には「リーダーシップ」や「自然保護」について考えるセミナーも開きました。


<はみだし>

・野外セミナー中参加者の須崎さんの携帯に『東京農工大・大学院合格!』の知らせがッ!その場で胴上げだ〜♪(←彼女の誕生日前日の出来事 ^^)

・ナガボノワレモコウをかざし、「これ何のにおいがする?」と長岡氏。
――なんかくさいのデスガ…。
「いいにおい・いい味だけじゃなくて、変な臭い・苦い味もあえて紹介し、五感で感じてもらうのが自然観察のPointなのだよ」
――なるほど。…でもやっぱり臭いデス。

・「ノコギリソウ?」「うん。のこぎり・saw」「……。」

・ある夜、お酒と共に始めた“恋愛合意形成せみな〜”。「自分の恋人に求める条件とは?」それを皆で合意をとり、一つの結論を出そう…というシロモノなのですが、みなさん中々こだわりを捨てきれないようでして。。。
――恋愛に合意は果たして可能なのだろうか?永遠のテーマである。



<参加者の声>
▼林 伸行(はやし のぶゆき・東京農業大学2年)

 このワークキャンプに参加前は、漠然と自然保護やボランティア活動をやってみたいと思っていたけど、自分にできることは体力仕事だけかなと感じてました。そんななかこのワークキャンプの話を聞いて、是非行った方がいいと進められて参加しました。
 始めはただ、がむしゃらに体力が続く限り作業をし、夜のセミナーは難しいなと感じていて、これから先どうなるんだろと落ち込んだりもしていました。でも日を追うごと作業ではこうしたらスムーズにできるというのが考えられてきて、セミナーではみんなとの交流や語り合いによって、自分の中で段々と考えが形作られていくのが見えてきました。

 それを感じたのが僕が好きだった木道の敷設でした。始めは力いっぱい釘を打っていましたが、打ち方を教わったら今までの半分の力で倍ぐらい早く打てるようになりました。そのときすごく実感したのは、ただがむしゃらにやるんじゃなく、どうしたらうまくいくだろうということを考えて行動し、その結果どうなるだろうという先を考えることの重要性に気付かされました。それと一人で考えるより多くの人から意見をもらったり、自分の意見を人にぶつけてたりすると新しい発見が得られるということに築きました。

 本当にこのワークキャンプに参加して、今まで見えていなかったことがたくさん見えるようになりました。それによってまた新しい問題も見えてきました。それもこれも一緒に参加した仲間や現地の人との交流、実際に現地を見たことによって分かったものだと思います。
 まだまだ知りたいこともあるので、またキリタップに行って見たいと思います。


▼宮前 美智恵(みやまえ みちえ・千葉大学1年)

 ワークキャンプに参加して初めて気付いたことがある。その中の一つは、湿原や湖、その他いろいろな珍しい自然地域も、そこに暮らす人にとってはあたりまえの生活環境なのだということである。
 家の外に出たら、タンチョウがいたり、エゾリンドウが咲いていたらどう思うだろうか。私だったら、驚き、写真に撮ったり、観察したり、きっと興奮状態になると思う。しかし、霧多布に暮らす人たちにとっては、それは日常の生活の一風景なのである。それに気付いた時に、めずらしい自然地域に暮らす人達に、そのめずらしさや大切さに気付いてもらうことの難しさを思い知らされた。それに気付いてもらうためにはどうしたら良いのか、どうしたら、その地域を客観的に見れるのか。
 正直、この課題はすぐには解決出来るものではない。私が思う解決策の一つは、まず、その地域から少しでも離れてみることのはどうだろうか。3ヶ月でもいいし、一年でもいいし、離れてみれば少しは大切さに気付くかもしれない。また、テレビなどで特集されたものを見るのもいいかもしれない。そういったことで、そこに暮らしている人達もその土地のめずらしさなどを実感できたらすてきだなと思う。

 もう一つ気付いたことは、ひとつの事を行う上で、いろいろな事が考えられているということだ。私はワークキャンプで木道に設置する解説版作りの担当になったのだが、例えば、その解説版に書く内容も、考える人がいたり、それをチェックする人がいたり、タイトルをみんなで考えたり、一つの事をみんなが真剣に考え、作り上げていった。さらに板の色、字の色など、細かいところまで考えられている。このように一つの事でも、どれだけ深く考えるかによって、その事、ものがより良くなるかに気付くことができた。
この考え方はあたり前だが、なかなか実行するのは難しい。しかし、これを機会に、一つの事を一つずつ大切にしていきたいと思う。

琵琶瀬展望台にて。後ろに広がるのが、
日本で3番目に大きいといわれる霧多布湿原だ!
雨ニモマケズ泥ニモマケズ、
掘レバ掘ルホド出テクル石コロニモマケズ、
湧キ出タ水ガ掘ッタ穴ヲ満タシテモメゲズ、
僕ラハ標識ノ為ニ深ク深ク穴ヲ掘ッタ
ヨシ湿原センターの標識立て完了! 木道製作中! まずは枕木を敷き・・・
音速の右腕。これを持った彼に勝てるものは、いない。
(板をはり・・・)
わーい! 完成!
ただ今、夜のセミナー中。悩み、考え、話し合う時間。 嗚呼、青春の1コマ。彼らが目指すものはいったい何なのだろうか?
――野外セミナーの昼食前、海辺にて波と戯れる
解説板の製作中! 交流会にて、解説版のお披露目中!向かって右のお坊さん、
実はトラスト理事の松浦明鏡さんである。