「アジア湿地ウィーク2003」のご報告!

湿地の保全と賢明な利用をアジア各国で推進するNGO、ラムサールセンターが、2003年より新たに2月2日〜2月8日を「アジア湿地ウィーク」と定め、湿地の大切さ、すばらしさをアジア各地においてより多くの人々に知ってもらうためのキャンペーン活動を開始いたしました。
私達F.A. Networkは、このうち日本国内で1月18日・19日に行われたオープニングイベント、「日本・中国・韓国−こども湿地交流in谷津干潟」に学生ボランティアとして参加し、また2月8日には東京農業大学野生動物学研究室・ラムサールセンターと協力して、韓国と日本の湿地保全に関する合同ワークショップを開催いたしました。

◇「日本・中国・韓国−こども湿地交流in谷津干潟−」

2003年1月19日(日)、中国と韓国より来日した小学校の子ども達やNGOスタッフ13名と、習志野市立谷津南小学校の子供達をはじめとする地元の方々が、一堂に谷津干潟自然観察センターに集いました。この日のイベントは、アジア湿地ウィークのオープニング記念として、日本・中国・韓国3カ国の湿地保全へ向けての国際協力を推進することを目的として開催されました。
午前中に行われたのは、3カ国の子供達による湿地紹介です。各国から選ばれた子供達9名が、それぞれ自分の国の、自分となじみの深い湿地への思い等を熱く語ってくれました。韓国の美しい民族衣装をまとって発表してくれた9歳のキム・ヒョンギョンさん、まるで物語のような心温まるスピーチをしてくれた中国のシュー・ジェンジューさん、そして手作りの鳥のぬいぐるみやカービングを用いてグループ発表をしてくれた谷津南小学校の竹内あやかさん、武田莉枝さん、涌井舞さんを始め、子供達は皆、小学生とは思えない程堂々とした、すばらしい発表をしてくださいました。
同じ日の午後には、「みんなでつくろう、干潟新聞!」ということで、3カ国の子供達が谷津南小学校に集まり、コンピューターを用いてみんなのアイディアを集結させた干潟新聞を作成しました。自分達で撮った写真を載せたり、絵を描いたり、みんなへのメッセージを書き込んだり、言葉も通じない3カ国の子供達が一生懸命にコミュニケーションをとりながら、それぞれにユニークな干潟新聞を作り上げていきました。「コミュニケーションがとれないのではないか」という私達の心配をよそに、3カ国の子供達は片言の英語や身振り手振りをつかって、あっという間に仲良くなり、私達学生ボランティアも子供たちの力に驚かされました。
現在もアジアにおける湿地生態系の破壊は急速に進行しており、決して楽観できる状況ではないのが現実です。しかし今回私達が出会った日本・中国・韓国の子供達の湿地保全に対する一生懸命な姿を見るうちに、日・中・韓3カ国が力を出し合って努力すれば、きっとアジアのすばらしい湿地環境を守りつづけていくことができるんだ、という大きな希望をもらうことができ、私達FAのメンバーにとっても貴重な体験となりました。
会場には、子どもから大人まで約40名が集まりました。3カ国語が飛び交う中、活発な意見交換が行われました。 司会をつとめるF.A.Networkの新井雄喜くん
中国黒竜江省のワン・ユーティンちゃん(11歳)。故郷チチハル市にあるザーロン自然保護区(ラムサール湿地)とそこに集まるツルについて思いを語りました。 韓国慶尚南道昌寧郡のキム・ヒョンギョンちゃん(9歳)。 ウーポ沼について発表しました。沼に行くと、おばあさんに抱かれているような安らぎを感じるそうです。
谷津南小学校6年生、武田莉枝ちゃん、湧井舞ちゃん、竹内采花ちゃん。谷津干潟の機能と重要性について3人で発表しました。手作りの図やぬいぐるみ、カービングを使い、中国・韓国の友だちに谷津干潟の生き物たちを紹介してくれました。 日本・中国・韓国の3カ国の子供たちが、アイディアを出し合って干潟新聞をつくりました。
みんなの思い出がつまった、干潟新聞の1コーナー。 また来年会おう!と約束した子どもたち

上記写真は、ラムサールセンターからお借りしました。



◇「アジア湿地週間記念ワークショップ−日本・韓国・湿地・若者達−」

2003年2月8日(日)、韓国の釜山国立大学より湿地の専門家であるGea-Jae Joo教授を特別ゲストとしてお招きし、韓国の湿地や湿地保全活動についてお話していただきました。80年代まで続いた軍国主義により自然保護活動が制限されていたこと、自然保護の分野ではまだ発展の途中であることなど、普段聞くことができないお話を詳しく聞くことができました。
また、東京農業大学野生動物学研究室で、韓国のカワウソについて研究された学生3名に研究発表をしていただきました。発表はそれぞれ、主に湿地に生息するカワウソの個体数を確認するための、カワウソの主な痕跡である糞の風化度合いの実験、韓国と日本におけるカワウソに対する意識調査、そしてカワウソの糞の痕跡をもとにした生息状況の調査報告でした。結果、現段階では、糞からカワウソの正確な生息数を特定することは困難であること、韓国でのカワウソに対しての意識は一時期に比べると低下していること、またカワウソの生息域、生息数は大幅に減少していることなどがわかりました。
最後に、日本の大学生による自然保護活動ということで、F A Networkから、北海道での自然保護ワークキャンプ、NEC学生バードソン、谷津干潟の「ソロモンの指輪プロジェクト」の活動についての発表を行いました。韓国から来日したJoo教授や、FAに関わっていない学生達に、FAの活動を知ってもらえる良い機会となったと思います。
当日は韓国のJoo教授の他、東京農業大学野生動物学研究室や農学部の学生達、同大学の安藤元一助教授、FAの学生スタッフ、FAと関わりの深いNGOであるラムサールセンターの方々にも参加・協力していただき、ワークショップの中だけでなく、その後の懇親会でもじっくりお話をうかがうことができました。
こうして、初めての試みである「アジア湿地ウィーク2003」は幕を閉じました。今回のように国境を越えた活動に参加できたことは、自然環境保全活動を行う私達F.A. Networkの学生にとっても大きな意味をもっていたはずです。地球温暖化、生物多様性の減少、森林破壊等、現存するあらゆる環境問題はもはや一国のみでは対処しきれなくなってきています。今後も日本だけでなく、世界を舞台に活躍できるよう、今回の経験を生かしていけたら、これ以上喜ばしいことはないでしょう。
「韓国の湿地と湿地保全活動」というテーマでJoo Gea-Jae先生に講演していただきました。韓国の湿地保全活動の歴史をはじめ、先生が以前から取り組んでいる韓国南部の洛東江河口湿地の現状と保護活動について、丁寧に説明してくださいました。 Field Assistant Network(自然保護活動に取り組む学生のボランティアネットワーク)事務局長、新井雄喜さん(早稲田大学)が「日本の学生NGOによる自然保護活動」について発表しました。

上記写真は、ラムサールセンターからお借りしました。

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